くわがきあゆ

レモンと殺人鬼      

レモンと殺人鬼 2023年12月9日( 土)
 小林美桜の妹妃奈が殺された。小学四年生の時洋食屋を営んでいた父が佐神翔という少年に殺害され、母が失踪し、二人は別々に親戚に預けられてつらい生活を送り、美桜は派遣で大学の事務員、妃奈は保険の外交員として働いていた。久し振りに会った妃奈は、佐神が十年で出てきたと言っていた。週刊誌に、妃奈の保険金殺人の疑惑が載ったことから、美桜はマスコミの取材攻勢を受けるようになる。仕事もできなくなると心配しているところに、桐谷という大学院生から放課後児童クラブのボランティアを頼まれる。美桜は妃奈が交際していたという相手に会って確かめようとするが会えないでいると、渚丈太郎という務めている大学の学生が協力を持ちかけてくる。二人で調査を始めると、襲われて暴行を受けた。
 ところどころに、洋食屋の父への少女の思い出とか、その洋食屋の少女と会う少年の思い出が差しはさまれている。読んでいて、こういう設定というか雰囲気というか読んだことがある感じがしたが、思い出せなかった。ただ、違和感というか矛盾というか感じるようになって、気づいたら折原一とか綾辻行人ばりの叙述トリックが仕掛けられていた。しかも最後まで読むともう一つの叙述トリックがあった。それも二重に。そしてとんでもない結末。テレビドラマにはできないだろうなと思う。「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。