櫛木理宇

赤と白 ホーンテッド・キャンパス 避雷針の夏  

赤と白 2016年1月28日(木)
 小柚子と弥子は、冬になると雪の閉ざされる町の幼馴染の高校生。東京の大学を目指す小柚子と地元で就職する弥子。明るくふるまう二人だが、それぞれ母親をめぐって問題を抱えていた。ある日、二人の幼馴染の双子の姉妹京香が東京から戻ってきた。小柚子は姉の百香では疑い、過去の傷がうずきだす。小柚子はアルコール中毒で摂食障害になっていた。教室の仲間である苺実が三人の中に入り込んで、ドミノ倒しのように崩れていく。
 冒頭に小柚子の家の火災と焼死体、小柚子の保護の新聞記事が出ていて、ミステリーかと思わせるが、母との確執に苦しむ少女たちの物語ともいえるし、ラストはホラーといえるかもしれない。小説すばる新人賞受賞作。

ホーンテッド・キャンパス 2018年8月12日(月)
 八神森司は霊感があって霊が見える。高三のある昼休み、中庭にいる女子生徒に黒い影が這い寄って行くのを見て、駆けつけて助ける。それ以来、その美しい少女、灘こよみへの恋に落ちた。一浪して入った大学にはこよみがいて、オカルト研究会に誘われたというので、一緒に入ることにする。部員は、部長の黒沼、副部長はアネゴ肌の三田村藍、そして黒沼を本家と呼んで付き従う黒沼泉水といった面々で、なぜか霊にまつわる相談事を引き受けてしまうのだった。
 おどろおどろしいホラー物かと思ったら、青春謎解きミステリーといった感じの軽い作品でおもしろかった。日本ホラー小説大賞・読者賞受賞作。

避雷針の夏 2020年3月28日( 土)
 日本海側の盆地にある睦間町。町は山崎一族と船江一族に分かれ、かつて殺人を犯した源田が消防団を牛耳っていた。よそ者は虐げられ、友人の誘いで塾講師としてこの町に移住した梅宮は「先生」と持ち上げられていたが、小料理屋の倉本一家はことあるごとに凄惨な暴行を受けていた。梅宮の娘・風沙と倉本の娘・菊瀬は親しくなり、お互い心に共通の傷を持つことから、夏休みにある計画を立てていた。そしてかつてないほどの猛暑の夏、祭りの神輿と一緒に暴走が始まる。
 帯に「嫌ミス系サスペンス」とあったが、なにが「嫌」かというと、登場人物のほとんどが嫌な奴だということになる。それでもある種の爽快感があって、おもしろかった。