黒川博行

カウント・プラン 破門 キャッツアイころがった  

カウント・プラン 2015年3月25日(水)
 「カウント・プラン」:福島浩一は計算症で、眼にはいったものは数えずにいられないので、人と接しないメッキ工場で働き、毎日判で押したような生活を送っている。ショッピングセンターに脅迫状が届き、テナントのペットショップの水槽からシアン化合物が発見された。福島の工場にも刑事がやってきて、脅迫状の切手から福島の指紋が検出された。
 「黒い白髪」:お寺の住職飯田が葬儀屋の永松をゴルフクラブで殴った。二人はゴルフ仲間だった。二人の関係を捜査すると、不審な金の流れが見えてきた。
 「オーバー・ザ・レインボー」:熱帯魚店で高価な熱帯魚が盗まれたが、色は派手だが安い魚も一緒に盗まれていた。熱帯魚店からは赤い小鳥の羽根が見つかった。
 「うろこ落とし」:マンションで下川路由紀が包丁で殺された。殺したのは居住者の田代恭子で、二人は高校、大学と同期で、恭子の父は由紀の父の会社で働いていた。由紀は不倫していて離婚するつもりだったが、恭子のせいでばれてしまったという。
 「鑑」:アパートの管理人をしている今村は、近所の女性が捨てたゴミを部屋に持ち帰ってコレクションにしていた。ホテルでバーのホステスが殺された。被害者が住むアパートも捜査され、今村が疑われる。
 「カウント・プラン」や「鑑」は、最初に登場する人物が犯人だったらおもしろくもなんともないが、あっと驚くどんでん返しがあっておもしろかった。表題作は、日本推理作家協会賞受賞作。

破門 2017年6月5日(月)
 建設コンサルタント業(実際はヤクザとの調整)の二宮は、腐れ縁のヤクザ桑原から、映画出資の話をもちかけられ、プロデューサーの小清水と会う。しかし、小清水は集めた金を持って姿を消し、別のヤクザが出資金の回収に現れる。あとは小清水を探し出して金のありかを聞いて騙され逃げられ、また探し出しては騙され逃げられの繰り返し。いい加減うんざりして途中でごみ箱に捨てようと思ったが、思い直して何とか最後まで読んだ。おもしろかったのは、桑原と二宮のやりとりぐらい。なんでこれが直木賞受賞作。

キャッツアイころがった 2022年9月25日(日)
 滋賀県余呉湖で、顔をつぶされ指を切られた死体が上がり、胃から時価五百万円のキャッツアイが出てきた。一方、京都では美大四回生の村山が下宿で死んでいるのが発見され、薬物による他殺の疑いがあり、口にはキャッツアイが入れられていた。美大の同じ日本画科で旅費のカンパのお礼に麻薬のハシシをもらっていた啓子と弘美は、警察の聴取をごまかして、村山が残したスケッチブックを手に、インドへ旅立ち、村山の足跡を探る。
 素人の学生探偵が大活躍で、警察による逮捕のお膳立てまでする。1986年のサントリーミステリー大賞受賞作。ネットも携帯もDNA鑑定も出てこないところが時代を感じさせるかもしれないが、おもしろかった。