黒田研二

ウェディング・ドレス      

ウェディング・ドレス 2009年3月8日(日)
 私の部屋で夕食をとっていると、ユウ君が「結婚しよう」と言った。胸の奥から暑いものがこみ上げて涙を流すと、「祥子の返事は?」とユウ君が囁いた…。祥子の作った夕食を頬張りながら、僕は「結婚しよう」と言った。祥子は幼い子供のように泣きじゃくり続けた…。章が変わると同じシーンを語り手を変えて繰り返している。だが、どこか変だ。どことなく二人の性格がずれている。そして、祥子の母が実家で絞殺されていて、ユウ君の双子の兄が行方不明なっていることが明らかにされる。二人だけの結婚式が決まって、母が残したウェディングドレスで教会で待っていると、結婚指輪を忘れて取りに戻ったユウ君が事故で病院に運ばれたと電話があった。駆けつけようとした私をユウ君の会社の人だという男二人が車に乗せたが、私はそのまま誘拐されて侵されてしまう…。僕が結婚式場の教会へ行くと祥子の姿はなく、今日祥子と結婚式を挙げる予定だったという男が二人いた…。祥子は強姦される前、円筒上の建物で女性が張り付けにされているのを見る。そして、ユウ君は兄と間違えて声をかけた男と一緒に駆け付けた円筒上の建物で死体を発見する。祥子を強姦した二人の男と、ユウ君が出くわした祥子の二人の婚約者は、風体が似ている。
 おかしい、何かずれている。以前読んだミステリーのおかげで、その謎はある程度推測できたが、複雑だ。設定に多少無理があるような気もするし、「ガリレオ」並みの光学トリックは果たして再現できるものかどうか疑問だが、おもしろかった。メフィスト賞受賞作。