玖村まゆみ

完盗オンサイト      

完盗オンサイト 2013年9月11日(水)
 水沢浹は、二十一歳と若いが海外で活躍するクライマー。今はパートナーのクライマー伊藤葉月にふられて、帰国しホームレス状態だった。公園と勘違いして自炊しようとしたお寺の境内で倒れ、桐泉寺の住職岩代辿紹に助けられた。寺には言葉を話せない斑鳩という男の子もいた。岩代と一緒に建設現場で働いていて練習しているところを発注者の國生地所の社長國生環に見られ、仕事の打ち切りと引き換えにゲームへの参加を強要される。山間の建設現場でのゲームを成功させると本社ビルへ連れて行かれ、そこに環の兄で会長の肇がいて、報酬一億円の仕事を依頼される。それは、皇居から〈三代将軍〉という樹齢五百五十年の五葉松の盆栽を盗み出すというものだった。
 おもしろかったが、ミステリーとは思えないし、冒険小説やサスペンスというほどでもない。斑鳩の父が登場する部分はミステリーな要素はあるが、この部分はなくてもいいような気もする。なぜか江戸川乱歩賞受賞作。