越谷オサム

ボーナス・トラック 陽だまりの彼女    

ボーナス・トラック 2012年4月4日(水)
 ハンバーガーチェーンの社員・草野哲也は仕事帰りひき逃げ事故に遭遇する。はねられたのは大学生の横井亮太。立ち上がると、自分の足元に自分が転がっていた。亮太は通りがかった草野の車に乗ってついて行く。草野は、最初空耳かと思っていたが、亮太の姿が見えるようになる。幽霊が見えるという学生アルバイトの南と三人で、逃げた犯人の車を探すことになった。
 「ボーナス・トラック」とはさえないと思っていた人生の最後に過ごした日々。亮太は短かった人生の意義を認めることができたし、草野は亮太のアドバイスで働いて寝るだけだった生活を変えていく。この世に残った幽霊たちを除霊(?)するエピソードも良かった。日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。

陽だまりの彼女 2015年9月19日(土)
 交通広告の代理店に勤める浩介が商談に出かけた先で受け取った担当者の名刺には、「渡来真緒」とあった。中学の同級生だった。中学一年の二学期に転校してきて、浩介の前にやってきて「私、わたらいまお」と告げた。すこぶるつきのバカであることが判明し、気まぐれな性格で、「真緒いじめ」が始まった。なぜか真緒は浩介に付きまとい、浩介は真緒に勉強を教えて、放課後の銀杏公園で一緒に過ごしていた。浩介が三年になって転校して、それ以来の再開だった。そして、あのバカが名門女子大出の有能な社員になっていた。すぐに二人は付き合うようになるが、真緒の実家にあいさつに行くと、真緒は全生活史健忘症で、十三歳で保護されるまでの記憶が全くないと知らされる。
 大ベストセラーで、映画化もされた恋愛小説だが、もしかしてと思いだすと、ミステリー並みに伏線たっぷりの、驚きのファンタジーだった。