河野裕

いなくなれ、群青 その白さえ嘘だとしても    

いなくなれ、群青 2016年5月9日(月)
 ここは階段島と呼ばれる。誰一人として島を出ることはできず、どうしてこの島にやってきたのか誰も知らない。僕は二十五日に本屋へ行くため家を出て、意識を取り戻したのは二十九日でこの島の海岸にいた。四日間の記憶はない。ここは捨てられた人々の島で、失くしたものを見つければ出られるらしい。この島で平穏に暮らしていた僕の前に、真辺由宇が現れた。見たくない顔だった。中学二年で別れるまで毎日一緒に行動していたが、悲観主義の僕に対して、彼女はまっすぐな理想主義者だった。
 郵便局にATMがあるし、アマゾンで注文することもできるが、グーグルマップには載っていない島。山頂に続く階段の上には、島を支配する魔女が住むと言われている。島にはいない子供が現れ、階段に落書き事件が起こる。
 設定が興味深いし、捨てられた真相もなるほどという感じ。村上春樹の「世界の終わりとハード・ボイルド・ワンダーランド」のようでもあるし、伊坂幸太郎の「オーデュボンの祈り」のようでもある。「大学読書人大賞」という賞の受賞作。次作も読んでみたい。

その白さえ嘘だとしても 2016年5月12日(土)
 「自分の不必要な部分」として自分自身によって捨てられた人たちが暮らしている階段島。階段の上に魔女が住んでいて、その魔女がこの島を管理していると言われている。そんな階段島で、ある日商品の発送をキャンセルするというメールが一斉に届き、インターネット通販の商品が届かなくなった。クリスマスを前に、島ではクリスマスの七不思議といううわさが流れていた。七草の小学生時代からの友人・真辺由宇はその一つ、島に来たハッカーがネット通販に障害を起こしたと思い、ハッカー捜しをしようとしていた。同じ寮の佐々岡は女子中学生のためヴァイオリンの弦を手に入れようとしていた。委員長の水谷は皆になじめない真辺にクリスマスプレゼントを考えていた。島の郵便局員・時任は、突然の大量のクリスマス・カードの配達に奔走していた。階段島でいったい何が起きているんだろう…。
 「いなくなれ、群青」に次ぐ、「階段島」シリーズ第2弾。 最大の謎が早くもわかってしまうのだが、別の謎がほのめかされて、次も読みたくなる。伊坂幸太郎の「オーデュボンの祈り」のような世界で、なかなか興味深い。