今野敏

隠蔽捜査 果断 隠蔽捜査2    

隠蔽捜査 2008年3月2日(日)
 竜崎伸也は、警察庁長官官房の総務課長、東大卒のエリート官僚だ。家庭のことは妻に任せて一切関わらず、職場では部下であろうと心を許すことはない。朝、竜崎は新聞で足立区内の殺人事件を知るが、竜崎のところへは上がってきていなかった。当初暴力団員同士の抗争かと思われたが、被害者はかつて起こった強姦殺人事件の実行犯の一人だった。竜崎は警視庁の刑事部長伊丹を呼び出す。伊丹は小学校の同級生で幼なじみと思われていたが、竜崎にとっては自分をいじめた張本人だった。日曜日早めに休んだ竜崎に伊丹から電話がある。同じ事件の共犯者が殺されたという。そして第3の事件が起こり、何気なくカレンダーに丸印をつけた竜崎はある可能性に気付く。一方、竜崎の家庭でも竜崎の地位を脅かしかねない出来事が起こっていた。
 警察内部の対立や隠ぺい体質を描いた警察小説。 エリート意識の持主でありながら、国家公務員としての原則、正論にこだわるあまり、周りからは変人呼ばわりされる竜崎のキャラクターや主張がおもしろい。吉川英治文学新人賞受賞作。

果断 隠蔽捜査2 2010年4月11日(日)
 息子の麻薬所持のため、警察庁から大森警察署長に降格させられた竜崎信也。その管内で消費者金融強盗事件が起こり、緊急配備の末二人は確保したが、一人は取り逃がしてしまった。同じ頃小料理屋で喧嘩があったという知らせがあり、様子を見に行かせると発砲があり、犯人の一人が人質を取って立てこもっている模様だった。SITが犯人と接触を試みるが、状況の悪化からSATが突入し、犯人を射殺して人質を救助した。しかし、犯人の銃に弾丸が残っていないことがわかり、そのことがマスコミに漏れると、竜崎と友人で刑事部長の伊丹は、監察官から責任を追及されることになる。一方、大森署のひねくれ刑事戸高が、この事件はしっくりこないと言い出した…。
 正論に従って行動する竜崎が共感を得ていく様子がおもしろいし、竜崎も硬直した見方を改めていく。事件の陰で、家庭では妻の冴子が血を吐いて倒れて入院したり、息子がアニメの仕事をやりたいと言い出したりする。そして、事件も二転三転して、盛りだくさんでおもしろかった。山本周五郎賞、日本推理作家協会賞受賞作。