小峰元

アルキメデスは手を汚さない      

アルキメデスは手を汚さない 2009年2月23日(月)
 女子高生の柴本美雪が、中絶手術の失敗で死んだ。相手の名前は出さず、「アルキメデス」とだけ言い残していた。父の健次郎は相手を探すため、初七日の法要に美雪と親しくしていた生徒を呼び集める。その頃学校では、呼ばれていた内藤規久夫の弁当を食べた柳生隆保が倒れて病院へ運ばれていた。砒素中毒だった。幸い症状は軽く、退院した柳生は修学旅行に参加する。柳生の家では、姉の美沙子が不倫相手の亀井を呼んでいたが、社員旅行に行くはずの母幾代が戻ってきたため、亀井を中二階に隠した。その後、亀井の妻から亀井の失踪届が出された。
 1973年の江戸川乱歩賞受賞作。 読んだような気もするが、本がないので復刻版を読んでみた。さわやかな学園ミステリーかと思ったが、そうでもないようだ。時刻表トリック、密室殺人、ほんとうに殺したのは誰か、といったところは2時間ドラマでもよく出てきそうな古典的なもので、読みながら予想できた。30年前の作品と思うと、大胆不敵な高校生像はショッキングだったかもしれない。