小泉喜美子 |
弁護側の証人 |
弁護側の証人 2010年1月21日(木) |
クラブ・レノのヌード・ダンサー、ミミイ・ローイ、漣子は矢島産業の御曹司杉彦に見染められ、大財閥の放蕩息子の花嫁となった。しかし、実権と全財産を握っている義父との初会見に失敗し、杉彦に生活費を援助しないと言われるようになってしまった。そして、妊娠していることがわかり、これで気持ちも変わるかもしれないと期待した夜、義父が殺されてしまった。 文庫のカバーには「真犯人は誰なのか?」とか「弁護側の証人とははたして何者なのか?」と書いてあるが、作品全体のトリックとは全く関係ないことだ。真犯人は、ミステリーに登場するいわゆる完全犯罪者ではなくて一般人なので、証拠隠滅が完璧ではなくて、再捜査でわかってしまっただけのことだ。 この作品のメインテーマは、犯人捜しでもトリックやぶりでもない。何がトリックなんだろうと思いながら読んでいて、 最後のほうの裁判の場面で、あれどうなってるの?という感じで初めてわかる。途中、「わたしたちが向いあっている、変哲もない、ごつごつした木のテーブル」という具合に、確かにヒントは出ているのだが。どこでどう誤認してしまったのだろう。 作者は翻訳家で、そのせいか文章が翻訳ミステリーっぽい。生島治郎の元奥さんで、酒場の階段から転落して亡くなったそうだ。 |