小手鞠るい |
欲しいのは、あなただけ | ある晴れた夏の朝 |
欲しいのは、あなただけ 2008年11月16日(日) |
「むかしむかし、好きになった人たちを思い出すとき、わたしはいつも、弟のことを思うような優しい気持ちになる。だって、昔好きになった人は、好きになったときには年上だったのに、今はみんな私よりも年下なのだ。彼らは年を取らない。永遠に年下のまま成長を止めて、私の胸の中で生き続ける。」「大人になってから、わたしを夢中にさせたのは、心逝くまで好きな人を思い、その思いを生きる、ということだった。遠い昔に、わたしはそれを生きた。そして今も生きている。地の果てで、独りぼっちの不完全な死体として。」 最初と最後の文章。かもめが十九のとき夢中になった人は、「男らしい人」。そして、子供のいる夫と結婚して再就職した職場で、奥さんとふたりの子どもがいる「優しい人」と知り合う。カモメの思いは、あなたそのものが欲しいということ 。「男らしい人」は実は結婚願望男で、「優しい人」は不倫願望男でしかないのだが、幻に恋しているのだから最初からすれ違っている。男性として 冷めて見るせいかもしれないが、純粋な恋というよりはパラノイアという感じで、あまり読後感は良くなかった。島清恋愛文学賞受賞作。 |
ある晴れた夏の朝 2024年9月27日(金) |
メイはアメリカ人の父と日本人の母との間に生まれたハイスクールの1年生。夏休みのカルチャーイベントとしてハイスクールの生徒たちが、
広島・長崎への原爆投下の是非を問う公開討論会を開くことになる。
肯定派は、成績優秀・スポーツ万能のノーマン、日系アメリカ人のケン、ユダヤ系のナオミ、中国系のエミリー。否定派は、天才と呼ばれるスコット、反戦・平和運動家のジャスミン、黒人で冷静なダリウス、そしてメイ。4回に分けて討論してその都度投票して勝ち負けを決める。 戦争による犠牲者を増やさないため、人体実験のためだった、真珠湾への報復だ、中国人を殺害した日本への処罰だ、人種差別だった、日本人は原爆投下を受け入れて反省している、等々いろいろな意見が主張され、それぞれ論理的・事実上の誤りもあるが、討論する中でそれぞれが自分自身を認識していくことになる。小学館児童出版文化賞受賞作。 |