小林由香

ジャッジメント      

ジャッジメント 2018年11月26日(月)
 凶悪な犯罪が増加する一方の日本で、二〇××年、犯罪者から受けた被害内容と同じことを合法的に刑罰として執行できる『復讐法』が生まれた。被害者は、旧来の法律に基づく判決か、復讐法に則り刑を執行するかを選択できる。ただし、復讐法を選んだ場合、選択した者が自らの手で刑を執行しなければならない。応報監察官・鳥谷文乃は、復讐法が執行される刑事施設で、刑の執行に立ち会う。息子を惨殺された父親、自分の母を自分の娘に殺され娘に刑を知っこする母親、通り魔事件の被害者になった兄、娘、婚約者、そして、妹を虐待死されて母と義父に刑を執行しようとする兄。
 おそらく世論を二分することになりそうな設定で、復讐すれば非難され、復讐しなくても別に非難される。監察官も好待遇を受けるが、こんな前歴があっては他の職場では受け入れられない。興味深い内容だった。小説推理新人賞受賞作。個人的には単純に割り切れている。刑罰は被害者の復讐ではなく、法の逸脱に対する懲罰なのだから。