木内昇 |
漂砂のうたう |
漂砂のうたう 2014年2月11日(火) |
維新から十年、元武士の定九郎は根津遊郭の遊郭美仙楼で、立番として客引きを務めていた。楼主たちが胴元になっている賭場へテラ銭を受け取りに行き、帰り道の石垣の穴に五銭ずつ抜いて隠している。決まったねぐらを持たず、女の家や湯屋で雨露を凌いでいる。このところ、噺家の弟子だというポン太という男が、定九郎の行く先々に現れて、意味ありげなことを言う。美仙楼の売れっ妓小野菊は、贔屓の身請け話を袖にする。そして、定九郎は賭場で会った以前の知り合いから、小野菊の足抜けを持ちかけられた。 根津は谷底。その遊郭で、元武士ながら住まいも持たず、先の見通しもなく、その日を凌ぐ。読んでいてやりきれない気持ちになるが、ミステリー仕立てのところがあって、その点ではおもしろかった。直木賞受賞作。木内昇(のぼり)という女性作家だった。 |