北川歩美

金のゆりかご      

金のゆりかご 2009年11月23日(月)
 野上雄貴は、GCS幼児教育センターの創始者近松吾郎から入社を誘われた。GCSは、近松のGC(金のゆりかご)理論に基づいて早期幼児教育を実施している会社で、野上は近松の実子だった。そして、野上自身早期教育を受けて、かつては天才小学生Y少年と言われた存在だったが、大学受験に失敗して今はタクシー運転手をしているのだった。そんな野上に河西というというフリーライターが接触してくる。9年前、子供たちの発作事故が相次ぎ、隠蔽するために子供を入れ替えているのだという。河西が上げた母子の中に、かつて野上の子を宿し駆け落ちした漆山梨佳の名前があった。そして、河西が死体で発見され、梨佳が失踪する。
 誰が殺したのか、入れ替わりはあったのか、そしてなぜ逃げるのか、いろんな謎が錯綜し、ラストも意外な展開でスリリングだ。ただ、この作品での天才、秀才というのは、いわゆる頭と心、右脳と左脳、といった二元論的な観点で描かれているので、登場する子供たちには誰しも不快感を覚えることだろう。