岸田るり子

密室の鎮魂歌      

密室の鎮魂歌 2009年2月14日(土)
 若泉麻美の美大時代の友人新城麗子の展覧会場で、一緒に行った高校時代の友人篠原由加が「汝、レクイエムを聴け」という絵の前で突然悲鳴を上げ、麗子に向って「この女は私の夫をどこかに隠している」と言い出した。由加の夫・鷹夫は5年前、毒入りのワインが残った密室から失踪していた。麻美はその場に立ち会っていた。由加によれば、絵に描かれた模様が鷹夫の背中の刺青とまったく同じなのだという。そして、同じ密室で、当時失踪事件の時一緒にいた麻美の高校時代の友人の高木太一が殺された。さらに、美大時代の友人一条哲もオーナーシェフを務めるレストランの密室で殺される。5年前の密室からの失踪事件と、今回の連続密室殺人事件はどう結びつくのか。そして絵と刺青の謎は…。
 密室というのはいくらでも作ることができるし、この作品でもたわいないものだ。作品の最大のトリックは、4人の人間の思いがけない人間関係のリンクだろうか。鮎川哲也賞受賞作。