川瀬七緒

よろずのことに気をつけよ      

よろずのことに気をつけよ 2013年8月31日(土)
 文化人類学者で「呪術」を専門にしている仲澤大輔のあばら家を、砂倉真由という少女が訪れた。祖父が一ヵ月前に殺され、縁の下から「不離怨願、あたご様、五郎子」と書かれた呪術符を見つけたという。その札を持って警察を訪ねると、担当の森居警部補の話から、祖父の健一郎は特殊な刃物で心臓をズタズタに抉られ、舌を切断されていたことがわかる。そして、現場にはタンチョウヅルの血が染み込んだ粗塩が落ちていたという。警察はカルト宗教を疑っているようだったが、仲澤は元神社の宮司で占い師をしている湯山にその札を見せ、鳥に詳しい野呂というホームレスを紹介される。そして、健一郎の行動を調べ、祈祷師の痕跡を追って高知、山形と移動し、福島の村を突き止める。
 数十年前の隠された事件がポイントとなっているが、そこに呪術を組み合わせたところがおもしろい。江戸川乱歩賞受賞作。