川上健一

翼はいつまでも      

翼はいつまでも 2004年11月12日(金)
 神山君は、青森県十和田市の中学生。野球部員で三塁の守備は得意だが、気が小さくて送球しようとすると緊張して速い球を投げられない。そんなわけで、グランドの脇の畑で球拾いの毎日。そんな神田君の楽しみが、夜布団に入ってラジオでアメリカ軍の放送で英語の歌を聴くこと。そんなある日、ラジオから流れてくる歌にとんでもない衝撃を受ける。「カモン、カモン、カモン、カモン、プリーズ・プリーズ・ミー…」 (奇しくもビートルズつながり。)繰り返し放送されるこの曲を何度も聴いて、次の日教室でみんなに教え、ついにでたらめな英語で大きな声で歌ってしまう。みんなに冷やかされバカ笑いされる中、いい曲だと思うと言ってくれたのはおとなしい転校生斉藤多恵だった。これがきっかけで神田君は野球部のレギュラーになる。第一章はこの後野球部 が舞台となり、第二章では、密かな企みを持って十和田湖へ野宿に行き、そこで斉藤多恵と再会して、彼女の意外な姿を知ることになる。
 スポーツ、初恋、父との対立、学校との対立といった青春小説で、エピソードや人物設定はよくありそうなパターンのてんこ盛り。斉藤多恵の設定も現実離れしている。それでも、楽しくさわやかに、少しホロッと読めた。十和田市は出身地の八戸市の近くなので、田舎の言葉も懐かしかった。坪田譲治文学賞受賞作。