川田弥一郎

白く長い廊下      

白く長い廊下 2006年8月28日(月)
 東京近郊J県の県庁所在地K市の中心部に位置する高宗総合病院で、十二指腸潰瘍の手術を終えた患者が、手術室から病棟へ移動する長い廊下で呼吸が停止し、集中治療室で痰が気管チューブに詰まって窒息死してしまう。考えられる原因は、筋弛緩剤マッスロンの効力がまだ残っているのに解毒剤パラスチミンを打ってしまったことだが、麻酔を担当した窪島は患者の自発呼吸を間違いなく確認していた。後日、病院に患者の妻が補償を要求してくる。窪島は誰かが術後マッスロンを打ったのではないかと考え、看護婦や関係者に当時の状況を聞いてまわるが、その過程で薬局の山岸ちづるという美しい女性が接近してきて、推理小説好きだというちづるとともに事件の真相を探っていく。
 事故か事件か、その結論とは別に、副次的な結果として大学の医局同士の勢力争いも明らかになっていく。病院の待合室で読むのは、なかなかスリリングでおもしろかった。ただ、山岸ちづるという女性、推理といい行動力といい、あまりにもストレートに真相に到達してしまうところが、ややできすぎという感じもした。江戸川乱歩賞受賞作。