香納諒一

幻の女      

幻の女 2005年2月16日(水)
 裁判を終えて地下鉄の階段を降りようとしてすれ違った女は、5年前突然姿を消した小林瞭子だった。翌朝彼女の死を知る。刺殺され、事務所には相談したことがあるという留守電が入っていた。弁護士栖本は今でも忘れられない彼女の謎を知ろうと動き始める。そして、彼女が小林瞭子とは別人であることを知る。興信所を使って調査するうち、産業廃棄物処理場誘致をめぐる、役人、暴力団が絡んだ事件に行き着く。
 結論がこれだから、1/3ほど読めばもう終わっているようなものだが、主人公の家庭の事情や彼女への思いが直接関係ないのに異常に語られて、結論が見え始めても、実は・・・、実は・・・、そのまた実は・・・の繰り返しで、どうでもいいような枝葉に分かれていく。社会派ミステリーと、最近多い恋人が失踪するという恋愛小説を組み合わせたようなハードボイルドもの。これでもシンプルに書き直したそうだが、材料を盛り込みすぎ。そもそも、ハードボイルドというのは、一人で暴力団に立ち向かって無事ですむわけがないのだし、全然リアリティがない。3連休で読もうと思っていたが、時間がかかってしまった。推理作家協会賞受賞は反対だ。