金城一紀

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GO 2006年4月25日(火)
 僕のオヤジは済州島で、戦後朝鮮籍を選んで《在日朝鮮人》となった。僕も『総連』が経営する『朝鮮学校』に通っていたが、中学3年のときオヤジがハワイへ行くために韓国を取得し、僕は日本の高校を受験することにする。
 ある日高校の唯一の友人の誕生パーティーに呼ばれて会場へ行くと、一人の魅力的な女の子が入ってきて、いきなり目の前に座った。その桜井という女の子はなぜか杉原という名前を知っていた。
 《在日》というアイデンティティを背景に、朝鮮学校に残った友人、乗り越えるべき壁としてのオヤジ、そして風変わりな女の子との恋愛が描かれる。高校生的な語り口で、『主義』は関係ない恋愛の物語だと語られるが、実際は友人のことも恋愛の行く末にも、《在日》という言葉が重くのしかかっている。
 ただ、そういったことも含めて、一人の高校生の青春小説として楽しく読めた。
 直木賞というと売れっ子作家やベテラン作家でもなかなか取れなくて、そのうち論功賞てきにもらえたりすることが多くて、新人に近い作家の場合はよほどの力作・大作でないと取れないのだが、この作品は確かにおもしろかったが、どちらかというと「小説すばる新人賞」かなという感じもしたのだが。