鴨崎暖炉

密室黄金時代の殺人      

密室黄金時代の殺人−雪の館と六つのトリック 2022年5月7日 (土)
 現場が密室である限り無罪であることが担保されるという判決が出た、ある意味「密室黄金時代」。高校生葛白香澄は、埼玉イエティを探しに行くという幼馴染の大学生朝比奈夜月と一緒に雪白館を訪れた。亡くなった推理作家雪城白夜の館で、かつて「雪白館密室事件」が起こった場所だ。支配人の詩葉井玲子、メイドの迷路坂千佳に迎えられ、同宿の客は、密室探偵の探岡、社長の社、医師の石川、中学生で国民的人気女優の長谷見梨々亜とマネージャーの真似井、殺人現場を聖地とする宗教「暁の塔」の神父神崎、同じく「暁の塔」のイギリス人少女フェンネリル、そして昨年まで葛白と文芸部で一緒だった蜜村漆理。翌朝、神崎が殺害されていた。状況は、「雪白館密室事件」と全く同じ状況の密室だった。橋が燃え落ち、電話戦は切られ、鎖された館の中で密室殺人が続いていく。
 密室トリックを考えるのは端からあきらめて、動機とか考えていたが、そもそもこの人たちは何の目的でこの宿を選んだのか、そして殺害される人たちがどうして同じ日に宿泊したのかという疑問が残った。サークルの合宿とか、何らかの関係で招待されたというのがよくあるパターンだが、それぞれ別々に予約して訪れたはずなのに。とはいえ、おもしろいと言えばおもしろかった。「このミステリーがすごい」大賞・文庫グランプリ受賞作。