加門七海

203号室    

 2003年5月9日(金)
 季節は早いが、怪談ばなし。夏休みは京極夏彦を読む予定なので。
 「蠱」は虫を使った呪い、「浄眼」は眼球譚、「桃源郷」はミイラの話、「実話」は学園幽霊物、「分身」は形代を使った呪いの話。全編に民俗学の御前教授が登場するが、物語に積極的に関わるのは最終話のみで、各編は独立した短編。登場人物が最初からあちらの世界へ行っているので、陰の世界が徐々に侵食して正常がいつの間にか異常に変化していくというような心理的な怖さはない。スプラッタ的な気持ち悪さが残るだけ。文体も登場人物の幼稚な心理そのものなので、あまり文学的ではない。テレビドラマにすればおもしろいだろう。

203号室 2008年9月7日(日)
 都会に憧れて、沖村清美は大学へ入って一人暮らしを始めた。大学は郊外にあり、アパートも思い描いていた東京とは異なる一間のアパートだったが、おしゃれな部屋作りにいそしむ清美だった。しかし、次第に異臭、窓に映る二重の影、床の温もり、床を踏み鳴らす男の足、といった異様な現象が次々と起こる。オリエンテーションで知り合った新里やアルバイト先の先輩ゆき子に相談するが、まともにとりあってもらえず、怪異現象はエスカレートしていった。
 いわゆるポルターガイスト現象を扱ったホラー。異常な部屋からはすぐ撤退するのか、それもと見えない敵に立ち向かうのか、清美の心も揺れ動くのだが、既に心が部屋に捕らわれていたということだろう。前半の清美の現金さ加減には笑えるものがあった。謎が謎のまま終わっているのが物足りない感じもする。