鏑木蓮

東京ダモイ      

東京ダモイ 2009年9月12日(土)
 自費出版専門の会社の営業槙野英治は京都府綾部市へ向かっていた。高津耕介という七十六歳の男性から三百万で出版したいという電話があったのだ。高津の原稿はシベリアの捕虜収容所体験の手記と俳句からなる句集だった。再度呼び出されて向かうと高津の姿はなく、延期するという置き手紙と一部切り抜かれた地方紙があった。新聞の切り抜かれた部分を探すと、舞鶴港でロシア人女性の水死体が見つかったというものだった。警察を訪ねると、高津が訪れて女性の身元を確認したというが、そのまま行方不明となっていた。警察は句集の原稿に書かれた当時の関係者から捜査を始め、槙野も上司の朝倉晶子も句集に書かれた上官の殺人事件の謎を解こうとする。
 いまさらシベリア抑留かという感じもするが、苛烈な体験は興味深いし、謎を解く過程や一種のトリックもユニークで、ミステリードラマを見ているようでおもしろかった。