伊予原新

お台場アイランドベイビー 磁極反転の日    

お台場アイランドベイビー 2013年11月25日(月)
 大震災に見舞われた後の東京。元刑事で今は暴力団のために働いている巽丑寅は、アフリカ系の子供丈太と知り合う。丈太が住んでいるコンビニには、ブランド物の時計を持った中国系の男がいた。巽は元上司の鴻池みどりにその話をする。震災後の東京には一時外国系の震災孤児ストリートチルドレンが現れ、一時姿を消したが最近また見かけられるようになっていた。みどりはそのコンビニに向かうが、同僚が店の男に殺されてしまう。事件はなぜか公安の案件になっており、丈太もなぜか暴力団に追われていた。
 建設工事を巡る不正、戸籍の偽造、カルト、家族喪失、同性愛と盛り沢山な内容だが、うまくまとまっていておもしろく読めた。横溝正史ミステリ大賞受賞作。

磁極反転の日 2017年5月9日(火)
 地球の磁極が反転し始め、磁気圏が弱くなって太陽風の影響を受けて、6月の東京に雪が降ったりオーロラが見えたりするという異常現象に襲われ ていた。こうした現象の取材をしていたフリーのジャーナリスト浅田柊は、 「地磁気問題を考える母親の会」の講演会で、都内のあちこちの病院で妊婦が消えているという話を聞いた。取材した妊婦もそのうち姿を消してしまった。消えた妊婦たちが 説明会に出ていたと聞いて、そちらから探って「零への階段」という団体にたどり着くのだが…。一方、厚生労働省、環境省など、関係部局でつくる政府の地磁気変動調査委員会にも異変が起こっていた。
 地球の磁極がかつて逆だったことがあるという話は見聞きしたことはある。それに伴う諸々のリスク、特に人体に対するリスクから、放射能汚染と同じようなパニックが起こるし、それを逆に利用とする企業も現れる。興味津々のSFミステリー だ。