岩城けい

さようなら、オレンジ      

さようなら、オレンジ 2019年2月20日( 水)
 サリマは夫と息子二人と一緒に、アフリカから難民としてオーストラリアにやってきた。やがて夫は去り、サリマはスーパーで生鮮食料の加工の仕事に就いた。子供たちが英語を話すようになり、サリマも英語の学校へ通い始め、オリーブ色の肌をしたイタリア人、黒髪で直毛のアジアの女と話をするようになる。ところどころ、この同じクラスのアジア女性(日本人)の恩師らしき人への手紙が挿入される。この女性は夫についてオーストラリアにやってきた。この手紙の中では、サリマはナキチ、イタリア人はパオラと紹介されている。サリマは職場での地位が上がり、地元の人たちにも溶け込んでいく。日本人(サユリ)も幼児の死と二度目の出産を経験し、大学での勉強と作品の執筆を目指すようになる。
 アフリカ難民と、日本からの移住者の女性。その解放と成長の物語といえるかもしれない。この小説には仕掛けがあるのだが、ネタバレになるのでここでは書けない。ミステリーではないからどうでもいいことだが。太宰治賞、大江健三郎賞受賞作。