石井睦美

白い月黄色い月      

白い月黄色い月 2010年7月26日(月)
 ぼくはハピネス島という島のドリーミング・ホテルにいる。カエル的人間のオーナーが世話をしてくれ、本のビブリオが話し相手をしてくれる。この島ではすべてが美しい。外はいつも薄明りが続き、空には変わらない白い三日月が見える。けれど、ぼくには記憶がない。名前を知らないし、年がいくつなのか、いつ、どんなふうにしてここに来たのかもわからない。まぶしくて熱い太陽、満ち欠けを繰り返す月…。なにかを思い出しそうになるが、記憶のしっぽは逃げていってしまう。そんなある日、黒い服を着たひとかげが現れる。
 ファンタジックな世界で少年は記憶を取り戻すのだが、最後まで読むと、この美しい世界と少年の体験は、果たして何のためにあったんだろうと思ってしまう。