井上真偽

その可能性はすでに考えた 聖女の毒杯    

                   
その可能性はすでに考えた 2018年11月14日(水)
 姚扶琳(ヤオフーリン)は中国出身の悪辣な金貸し。そのフーリンから巨額の借金をしているの探偵・上苙丞(うえおろじょう)の南阿佐ヶ谷の事務所に、渡良瀬莉世(リゼ)という若い女性が仕事の依頼にやってきた。「人を殺したかも、しれないんです。」リゼは、幼い頃山中の断崖に閉ざされた「血の贖い」という新宗教団体に母と一緒に入っていた。ある日地震が起こり、水が涸れると、教祖は村の出入り口を塞いで、「最後の晩餐」を開き、集団自殺した。リゼは親しくしていたドウニという少年に抱かれて脱出したが、発見された時、傍らにドウニの切り離された首と死体が横たわっていたという。リゼには自分を抱いて走っているドウニの首を持っていたという記憶があった。
 うえおろは膨大な報告書を作り、これは『奇蹟』だという結論を出した。うえおろ「奇跡の存在証明」という妄執に取り憑かれていたのだった。そこに、元検事の大門、フーリンの昔の仕事仲間・リーシー、元うえおろの助手で小学生の八つ星などが現れて、トリックを推理して『奇蹟』を否定しようとする。その度、うえおろは「その可能性はすでに考えた」と言って、報告書の該当ページを示してトリックを棄却するのだが…。
 メフィスト賞受賞作家の第2作で、ミステリ界激賞の話題作だそうだが、どんでん返しに次ぐどんでん返し、くどくて飽きてしまった。(漢字変換が大変だった)
                   
聖女の毒杯 2019年10月26日(土)
 中国人の金貸し・フーリンは、以前世話をしたに所有会社の一つの社長を任せようと田舎の町を訪ねた。その中学生になる娘・双葉は地元の名家俵屋の婚礼に付き添いとして出ることになっているという。見物可能というので挙式に出席すると、三々九度代わりの「大盃の回し飲み」が行われ、花婿、花婿の父、花嫁の父が毒死するという事件が起こる。盃を口にした順で一人おきに死んでいた。フーリンの元ボスの中国人・沈が現れて、どさくさで酒を飲んで死んだ犬が彼女の大切なペットだったという。フーリンについていった少年探偵・八ッ橋が謎を解こうとするのだが、この犯人、実は…。
 事件が起こるたび、犯人やトリックより奇蹟としようとする探偵・上苙があとから登場して、何とか解決するのだが…。このシリーズはあまり好きじゃない。2017本格ミステリ・ベスト10第1位。