井上ひさし

父と暮らせば      

父と暮らせば 2010年9月6日(月)
 昭和二十三年、広島市。二十三歳の美津江は雷が怖い。父の竹造はピカのときからだと言う。美津江が務める図書館によく来る木下さんという人が原爆の資料を探している。竹造は二人の思いを察して応援するが、美津江は自分はしあわせになってはいけないととりあわない。美津江は、落した親友からの手紙を拾おうと身をかがめた瞬間石灯篭の陰にはいって命が助かったのだった。
 映画化もされた戯曲。父の扱いがどこか変だと思っていたら、幽霊だった。窮地に陥っている子供を親が幽霊になって助けるというのは浅田次郎の作品によくあるが、この作品の場合、父はしあわせになりたいと願う主人公のもう一つの思いの分身だそうだ。井上ひさしの追悼のつもりで読んでみた。