今村夏子

こちらあみ子 むらさきのスカートの女    

こちらあみ子 2014年10月25日(木)
 「こちらあみ子」:あみ子が小学生のころ、義母が自宅で書道教室を開いていて、そこに通っているのり君を好きになった。学校をさぼってばかりいるから知らなかったが、同じクラスの子だった。母が流産して、あみ子が庭に墓を作るとショックで母は心を病んでしまい、兄も不良になっていった。中学になって、のり君に好きじゃと言うと、殴られて前歯が折れてしまった。…
 「ピクニック」:ルミたちが働く、ローラーシューズをはいた女の子たちがビキニ姿で接客する店に、七瀬さんという女性が面接に来た。厨房を希望していたが、人手不足で接客に回された。子供の頃川で運動靴を拾った縁で、お笑いタレントの春げんきが彼氏だという。
 不思議な小説だ。そしておもしろい。「ピクニック」の七瀬さんについていくルミたちが異様でおもしろい。太宰治賞、三島由紀夫賞受賞作。ほかに、「チズさん」収録。

むらさきのスカートの女 2022年10月14日(金)
 近所に「むらさきのスカートの女」と呼ばれている人がいる。いつもむらさき色のスカートをはいていて、一週間に一度くらい商店街のパン屋でクリームパンを買い、公園の決まったベンチのシートで食べる。子供たちがじゃんけんに負けるとその女の肩にタッチして遊ぶ。働いている時期と働いていないと時期があり、わたしはこの「むらさきのスカートの女」と友達になりたくて、自分の職場の募集が載った求人雑誌をそのシートに置くということをしつこく繰り返す。そしてついに、「むらさきのスカートの女」がわたしの職場にやって来て働くことになった。
 次第に下世話な話になっていって、ミステリーっぽい要素はあったが、あまりおもしろくはなかった。芥川賞受賞作。