今村昌弘

屍人荘の殺人 魔眼の匣の殺人    

屍人荘の殺人 2019年1月5日(土)
 葉村譲は神紅大学一回生でミステリ愛好会の会員、会長は「神紅のホームズ」と呼ばれる明智恭介。と言っても会員は二人だけ。明智は夏休みの映画研究部の合宿に参加したいが断られている。夏のペンションに同世代の若者が集うわけで、事件が起こりそうだというのだ。そこへ剣崎比留子という二回生の学生が現れ、『今年の生贄は誰だ』という脅迫状が届いて多くの部員が参加を辞退しているので、一緒に参加することをもちかけてきた。そして、三人で合宿に参加することになる。参加したのは映画研究部、演劇部の部員にOBの男性三人。柴湛荘という三階建てのペンションでの合宿最初の夜、バーベキューの後の肝試しの最中事件が起こった。ゾンビの群れに襲われ、柴湛荘に籠城することになったのだ。明智もゾンビの群れに呑まれてしまった。パニック状態の中で、映画研究部部長の進藤が殺された。
 有栖川有栖の江神・有栖のコンビみたいなものかなと思っていたら意外な展開。クローズド・サークル・ミステリーにパニック物を組み合わせたような感じ。何となく犯人の目星は着いたが、実際はもう一人の方だった。パニックを引き落とした集団が直接関係しないところが変な感じではある。鮎川哲也賞受賞作。その他各種ミステリーベスト10第1位、本屋大賞第3位という話題作。

魔眼の匣の殺人 2022年12月31日(土)
 娑可安湖事件から生還した神紅大学のミステリ愛好会会長の葉村譲と、唯一の会員で先輩の剣崎比留子。事件で浮上した班目機関という組織の研究施設があったという情報をもとに、W県の山奥の好見地区を訪れる。バスで一緒になった十色真理絵、茎沢忍という高校生、車のトラブルで立ち往生した師々田巌雄とその息子純、バイクが燃料切れになった王子貴士とともに、地元出身の朱鷺野秋子に伴われて川向こうの真雁という集落にある、魔眼の匣と呼ばれる建物へ向かう。そこには予言者のサキミという老女とサキミに仕える神服奉子という女性が住んでいて、かつて班目機関によって超能力の研究がおこなわれていたという。サキミは「十一月最後の二日間に、真雁で男女が二人ずつ、四人死ぬ」と予言した。直後唯一の橋が焼け落ち、電話も普通になっていた。調査に外を歩いていると地震が起き、先に取材に来ていたオカルト雑誌「月刊アトランティス」の記者臼井頼太が土砂にのみ込まれた。
 鎖された空間と死の予言と殺人事件。直後に起こる惨事を絵に描いて予言する真理絵とか、人物名が駄洒落になっているのはおもしろいが、実はそれぞれの人物の背景にも謎を解くカギがあった。