今邑彩

ルームメイト 金雀枝荘の殺人    

ルームメイト 2010年4月25日(日)
 萩尾春海が不動産屋で知り合ったルームメイトの西村麗子が、一緒に暮しはじめて一カ月もしないうちにガラリと変わり、ある日姿を消していた。彼女の実家へ電話すると麗子が出てきたが、まったく別人だった。松下貴博が単身赴任先から家に戻ると、内縁の妻の平田由紀がいなかった。そんなことが二週続き、隣室の女性は随分前から月曜から木曜まで留守だったという。春海が麗子の部屋の電話のリダイヤルボタンを押すと、出たのは松下だった。春海は松下に頼まれて、大学の部の先輩の工藤謙介とともに西村麗子を訪ねる。ルームメイトの麗子、そして由紀の写真を見せると、その女性は麗子の実母青柳麻美だった。麻美を訪ねると、殺されていた。
 多重人格を扱った「誰」をあてるミステリー。 半分ぐらいでわかっちゃったと思ったが、そう簡単なはずがない。こちらかなと思ったりもするが、その兆候はないし。やっぱり意外な結末だったし、ラストもひねりが効いていておもしろかった。

金雀枝荘の殺人 2010年9月5日(日)
 武蔵野の古い館を若い男女が訪れた。この館を建てた田宮弥三郎のひ孫の田宮乙彦、鈴木冬摩、松田杏那と類の姉弟、そして冬摩が連れてきた幽霊が見えるという笠原美江の5人。そこに、フリーライターを名乗る中里辰夫という男が加わる。弥三郎がドイツ人の妻エリザベートのために建てたこの館では、去年のクリスマス、やはり弥三郎のひ孫の、乙彦の妹絵李沙、川村真里以と由宇璃の姉妹、冬摩の弟世範、神代薫と管理人の曾根源次が閉ざされた館で殺されるという事件があった。あたかもグリム童話の「狼と七ひきの子やぎ」を見立てたかのような様相で。さらに昔、弥三郎が雇った管理人の瀬川直吉が妻の玉と娘の瑞江を殺して自殺するという事件があった。そして、エリザベートは生まれた娘を捨ててドイツを帰ってしまったという。中里にそうした経緯を説明すると、中里はそれぞれの事件を推理してみせた。
 閉ざされた館での殺人というと、一人また一人と死体で見つかり、パニックに陥っていくものだが、この場合は動きがあったと思ったらあっという間に終結してしまったという感じで、少し物足りなさも残る。ただ、最後まで読んで、ほんとうにそうかなという生き残った者への都合のよさも感じた。だとしたら怖い物語だが。