池永陽

走るジイサン      

走るジイサン 2004年4月16日(金)
 作次は69歳。鋳物工場を辞めて今は、息子とその嫁との3人暮らし。近所の喫茶店で会社を定年退職した健造、大阪から流れてきた正光と、老人同士コーヒーをすすりながら話をする毎日。その作次の頭の上に猿が居座るようになる。もちろん周囲の誰にも見えない。
 自分自身の祖父の思い出、息子の嫁の匂いに感じる微妙な熱っぽさ、喫茶店の娘の悩みごと、息子の嫁への電話の謎、そして正光夫婦の真相・・・。そんなエピソードを通して、老いていくことの悲しくまた滑稽なむごたらしさの中で、周りの人を温かい目で見守るかっこいいジイサンを描いている。小説すばる新人文学賞受賞作だ。