一穂ミチ |
スモールワールズ |
スモールワールズ 2025年6月30日( 月) |
「ネオンテトラ」:モデルの美和には子供ができない。そして夫の貴史は不倫している。窓から向かいのマンションで少年が男に怒鳴りつけられているのが見えた。よく遊びに来る姪の有紗によると、同級生と父親だそうだ。コンビニで見かけて話しかけた。 「魔王の帰還」:事件を起こして野球をやめて転校した鉄二の家に、姉の真央出戻ってきた。身長百八十八センチ、あだ名は「魔王」。同級生の菜々子がおばあちゃんの駄菓子屋を手伝っていて、店では金魚すくいもやっていた。そして、3人で金魚すくい大会に出ることになった。 「ピクニック」:母希和子、娘瑛里子、その夫の裕之と子供の真実、夫の両親とでのピクニック。この家族にも過去があった。瑛里子の最初の子未希がベビーサークルから落ちて死んで、希和子が虐待の疑いで逮捕された。そして、過去にも瑛里子の妹真希が同じように不審死を遂げていた。 「花うた」:新堂深雪は、親代わりに育ててくれた兄を殺され、その犯人向井秋生に手紙を書き、怒りをぶつけたりしながらもやり取りを続けるようになった。 「愛を適量」:高校教師の慎悟がマンションに帰ると、部屋の前に見知らぬ男が立っていた。たずねると、別れた妻が引き取った娘の佳澄だった。タイで手術するけれどその前にしばらく置いてほしいということだ。慎悟は部活の顧問に入れ込んで事故を起こし、妻は出て行き、無気力教師になっていた。 「式日」:高校時代の後輩から、父の葬儀の参列を求められた。虐待を受けていた父が、一人になりアル中で自殺したのだという。後輩は、定時制高校へ通っていた時同じ机を使っていた普通科の生徒だった。 ミステリー仕立ての「ネオンテトラ」と「ピクニック」には悪意が感じられるし、他の作品は人情ものっぽいが、改めて考えるとそれほどでもという感じがする。確かに面白くストーリーを作ってはいるが。「ネオンテトラ」と「式日」は人物が共通していて、「愛を適量」と「式日」はたぶん学校が共通していて、「ピクニック」と「花うた」ももしかしたら弁護士が共通しているかもしれない。ドラマ化したらおもしろそうに作り込んである。吉川英治文学新人賞受賞作。後に、直木賞も受賞している。 |