伊吹亜門

刀と傘      

刀と傘 2024年2月21日( 水)
 実在する日本の司法制度の生みの親・江藤新平と、架空の旧尾張藩士・鹿野師光が出会い、幕末・明治維新の時代に京で起こった事件の謎を、相互に補いながら解決する連作短編集。開国交易派の志士が惨殺される「佐賀から来た男」、弾正台の巡察が密室で切腹していた「弾正台切腹事件」、その日の処刑執行が決まった元長州藩の人斬りが牢獄で毒殺される「監獄舎の殺人」、京の市政局次官が妾宅で殺され、襲った徳川残党も妾に銃殺された「桜」、征韓論の対立で下野した江藤が立ち寄った京で殺人の容疑をかけられる「そして、佐賀の乱」。
 目的のためには手段を選ばない江藤新平の冷酷さに鹿野は徐々に離れていく。解決といっても、本来許されない禁じ手ばかりなので、どの事件も後味が悪い。倒叙ミステリーの「桜」がおもしろかった。 本格ミステリ大賞受賞作。