百田尚樹

永遠の0      

永遠の0 2010年8月30日(月)
 フリーのライターをしている姉の慶子に頼まれて、健太郎は実の祖父のことを調べることになった。祖母の最初の夫は特攻隊で死んでいて、短い結婚生活の間に生まれたのが母だ。祖母は戦後再婚していて、祖母が亡くなるまで実の祖父のことは知らされていなかった。何度も司法試験に落ちてぶらぶらしている健太郎は、退屈しのぎのつもりで調べ始める。厚生労働省で祖父宮部久蔵の軍歴を調べ、戦友会に手当たり次第に手紙を書いて祖父を知っている人物を探し、訪ねて話を聞く。祖父は零戦の搭乗員で、非常に優秀なパイロットでありながら「生きて帰りたい」と言う臆病者だったという。祖父を知る人物の話を聞いていくうちに、戦争の悲惨な実態や祖父の人物像が見えてくるが、生きて帰って妻や娘に会いたいという祖父が、なぜ特攻で命を落としたのか…。
 最後、ミステリーのようにいろいろな糸が一つにつながる。なかなかおもしろかった。それにしても、戦争物は読むたびにつくづく嫌な気分になる。多くの兵士は軍の上層部に殺されたようなものだ。そして、慶子に取材を勧めた新聞社の記者と言うのも出てくるが、こんな奴いるかというぐらい偏った思考の人物だが、実際そういうものらしい。