堀川アサコ

たましくる ゆかし妖し    

たましくる 2011年10月15日(土)
 昭和六年、島田幸代は東京を出て青森の弘前へ向かっていた。双子の姉雪子が内縁の夫を刺し殺して首を吊って無理心中し、前夫大柳新司との子供、六歳の安子を大柳家で引き取ることになったのだ。大柳の家を訪ねると、心中癖のある新司は座敷牢のようなところに閉じ込められていた。幸代は新司の妹で盲目の巫女(いたこ)千歳の家で、千歳の手伝いと安子の世話をすることになった。幸代は、十年前に失踪した新司の恋人蝶子に似ているらしい。そして、なぜか幸代の周りには幽霊が現れる。巫女の千歳には奇妙な頼みごとをする客が現れ、千歳と幸代の二人でその謎を明かしていく。
 イタコ探偵といっても死者の霊を呼び出して事件を解決するわけでもない。どちらかというとイタコの千歳は後ろに控えて、幸代が探偵役をやるという感じ。「たましくる」とは「魂来る」のこと。津軽弁が感じが良かった。

ゆかし妖し 2015年12月16日(水)
 時は室町時代。奥州から夫を捜して上京して、悲田院と呼ばれる救護所に担ぎ込まれていた女が亡くなった。毒を盛られていた。朝廷の警察組織である検非違使の手先である放免の野辺送りに、悲田院で世話になったという、ひおむしという若い女がついてきた。検非違使の少志である清原龍雪のもとに、猪四郎という夫を捜して奥州から出てきたという着草という若い遊女がやってくる。そして、遊郭随一の売れっ子である笙という遊女が首を切って殺され、一緒にいた割菱の君と呼ばれる客と着草が姿を消した。
 日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作だが、ミステリーとして読めると思う。 大方の筋立ては予想した通りだったが、犯人は意外な人物だった。こういうのもおもしろい。