平田俊子

ピアノ・サンド      

ピアノ・サンド 2009年12月27日(日)
 「ピアノ・サンド」:以前会社勤めの頃の後輩だった諏訪から百年前のピアノを預からないかと言われた。結婚しているとき使っていた家具を、これを機会に小さいものに買い替えようと思う。部屋には月に何度か、高校のときのクラスメート槙野が寄る。槙野にはあまり執着しないように気をつけている。そして、ピアノのある暮らしを想像して楽しむようになっている。
 「ブラック・ジャム」:母が入院したという知らせに実家へ戻ると、母は病室で眠ったままだった。子供の頃腕にやけどを負ってケロイド状になっているので、秋から春の間だけアルバイトで働いて、半袖になる夏の間は部屋でじっとして過ごしていた。この傷は母のせいでもある。学生時代は、指の欠けた男と付き合っていた。そして、今杖をついた男と出会って胸を高鳴らせている。
 詩人・劇作家で「二人乗りで」で野間文芸新人賞を受賞した作家の、小説デビュー作(?)。シニカルな比喩や表現が特徴的。「ピアノ・サンド」はまあ感じが良かったが、「ブラック・ジャム」のほうは暗くて食傷気味。セクシュアルというほどでもないが、どちらの作品でも男は暴力的だ。
 「槙野は図書館から借りだした本のようなものだとわたしは思おうとした。」
 「抱き寄せられて胸と胸とが激しくぶつかる。サンドイッチのパンとパンみたいだ。わたしたちの間にはさまれているものがあるとしたらそれは一体何だろう。」