干刈あがた

黄色い髪 ウホッホ探検隊    

黄色い髪 2003年7月20日(日)
 「しずかにわたすこがねのゆびわ」という小説を読んだ時、同じ女性なのにどうしてこんな酷い小説を書いたのだろうと聞きたいと思った。
 この作品はいじめを描いた小説。中学生夏実はクラスの無視にあって、髪を脱色し登校拒否する。夫が亡くなった後、美容院を開いて子供を育ててきた母親史子は、自分も髪を脱色して、同級生たちに問いかけ、夜の街でしゃがみこむ不良少女たちの話を聞いていく。夏実も原宿でいろんな人間と出会う。この小説では、学校のほうが逆ギレしているしているように描かれているが、もっと本質的に、人間が社会的に生きるということの意味を問いかけているように思える。NHKでドラマ化されていて、1、2度見たことがある。母親役は山本陽子だったのは覚えているが、娘役は調べたら濱田万葉だった。どこか壊れそうな感じの子だった。
 この作者の人物の描き方は、全ての登場人物を少し突き放して、それぞれ批判的にというか、自省的に描いているような部分がある。と同時に、「ゆっくり東京女子マラソン」でも感じたが、お母さんたちが淡々と自分の意見を言う口調は、どこか小津安二郎の世界のようでもある。名前は以前から知っていたのに、読んだのは亡くなった後だった。読んだ後で、いろんなことを聞いてみたい作家なのだ。

ウホッホ探検隊 2016年10月16日 (火)
 夫が職場から戻らなくなり、別の女性ができ、離婚することになる。作者自身を投影した《私》が《君》(長男の太郎)に呼びかける形式の小説。約35年前、離婚がまだ微妙であった時代に書かれた小説で、子供たちも離婚した夫婦の子供のあり方を模索する。それが「ウホッホ探検隊」ということだそうだ。芥川賞候補作。