東川篤哉

密室の鍵貸します 謎解きはディナーのあとで 探偵少女アリサの事件簿 溝の口より愛をこめて  

密室の鍵貸します 2011年7月28日 (木)
 関東近郊のかつて烏賊漁で栄えたという烏賊川市。町起こしのため誘致した大学の映画学科に籍をおく戸村流平は三年になり、先輩が務める地元のテレビ局系列の映像制作会社に内定をとりつけた。ところが、それが原因で恋人の紺野由紀にふられてしまう。落ち込んでいる流平にその先輩の茂呂耕作が電話をくれた。茂呂のアパートのホームシアターで、つまらないと誰もが言う「殺戮の館」というビデオを見て、シャワーを浴びるという茂呂が戻らないので浴室をのぞくと、ナイフで刺されて死んでいた。そのまま気絶したらしく、気がつくと翌朝。部屋には鍵がかかっていて、密室状態になっている。友人に電話すると、紺野由紀が殺されて、警察が来たという。逃げ出した流平は、姉の元夫である私立探偵の鵜飼杜夫を頼る。
 最近、「謎解きはディナーのあとで」で本屋大賞を受賞し、ユーモアミステリーとして注目されている作家で、確かにくすぐるところは多いが、わざわざユーモアミステリーとジャンル分けすることもない。一見密室トリックのようだが、実は…。

謎解きはディナーのあとで 2012年12月6日 (木)
 宝生麗子は、国立署に務める刑事だが、実は一大企業グループ『宝生グループ』のお嬢様。上司は風祭自動車の御曹司で、銀色のジャガーを乗り回す風祭警部。麗子は少しずれたこの上司が苦手だ。そして、若い執事の景山は、麗子が捜査の状況を話すと、「お嬢様はアホでございますか」などと暴言を漏らした後、事件の真相を解き明かしてしまうのだ。
 短編集なので、謎解きは言われてみればそうかという程度のものだが、宝生麗子、風祭警部のボケぶりがおもしろい。本屋大賞受賞作。

探偵少女アリサの事件簿 溝の口より愛をこめて 2024年3月14日 (木)
 仕入れの大量誤発注で都心のスーパーを首になった俺、橘良太三十一歳は地元武蔵新城の木造アパートに移り住んだ。昔馴染みから手伝い仕事を頼まれるうち、『なんでも屋』を開業することにした。仕事の依頼があって武蔵溝ノ口の邸宅を訪れると、仕事はなんと絵のモデル。仕事が終わると悲鳴が聞こえて、お客の父で有名画家の篠宮栄作が死んでいた。駆け付けた刑事は高校時代の同級生、長嶺だった。一週間後仕事の依頼があってまた溝ノ口を訪れると、そこは有名な探偵綾羅木慶子とやはり探偵の夫孝三郎の豪邸。仕事は、留守の間娘、小学四年生の有紗の子守をすることだった。ロリータファッションの有紗は、画家の殺人事件で目撃された男が良太だと知っていて、事件を捜査しようとする。
 他に、容疑者のアリバイを崩せない鉄道トリック、浮気夫婦の両者殺人事件、野球場での被害者の足跡しかない事件。探偵のキャラクターもいろいろあるが、今度は美少女小学生探偵登場。まあおもしろかった。