辺見庸

自動起床装置      

自動起床装置 2003年10月31日(金)
 通信社の宿直室で、依頼のあった宿直者をその時間に起こすのが「起こし屋」の仕事。「眠っている人の表情というのは、しばしば、水に溺れているときのようになる。…眠っている男の顔は、ときとして、死者のそれのようにすべての輪郭が固まってしまう。」そんな職場に、自動起床装置が導入されることになり、眠りや目覚めに独自の哲学を持っている同僚の聡は激しく反応する。「眠りの芯のところは、機械がいじったりしてはいけないところなんだ。木の精みたいな、ちっちゃな神様がすんでいるようなところなんだから。」
 作者は共同通信社の記者で、著作のほとんどはノンフィクション。数少ない小説が芥川賞を受賞してしまった。芥川賞の選考委員は、特殊な状況設定やパラノイアに弱いようだ。