林真理子

最終便に間に合えば      

最終便に間に合えば 2007年2月21日( 水)
 「最終便に間に合えば」:ファイン・フラワーという造花を始めた美登里はたちまち有名人になっていた。セミナーの仕事で来た札幌で、美登里はかつての恋人・長原に電話する。最終便で帰る日の夜レストランで食事を共にすると、長原は執拗に引き留めようとする。美登里は長原と過ごした日々と 惨めな別れを思い出すのだった。
 「エンジェルのペン」:OL生活を小説にして応募した新人賞で佳作をとった浩子は会社をやめるが、なかなか次の作品が書けない。編集者に催促されるまま、友人や母の話を小説に書いていくのだが・・・。
 「てるてる坊主」:まだ三十四歳の夫の頭が薄くなり始め、娘が幼稚園で作ったてるてる坊主を夫の顔に似せて描いてつるすと、それを見つけた夫が激怒した。
 「ワイン」:カナダへの取材旅行中見栄を張って買った三万円のワイン、誰と飲もうか、あるいは誰にあげようかと、付き合っている男、ワイン通のイラストレーター、女性雑誌の副編集長、かかりつけの医院の院長と 進物の相手を変えていく・・・。
 「京都まで」:フリーライターの久仁子は、大阪にいる先輩の悦美の同僚で、京都から通っている年下の男・高志と付き合うようになり、次第に週末京都へ通うのが執念になっていき、ついには京都住まいを決意して高志に打ち明けるのだが・・・。
 直木賞受賞作。三十歳前後の女性の恋愛、仕事、焦り、虚栄心、恥辱をユーモラスに描いた、笑えるような切ないような作品。