早瀬乱

三年坂 火の夢      

三年坂 火の夢 2009年9月6日(日)
 明治二十五年の東京で神田大火と呼ばれる火事が起き、火事現場を駆ける人力俥夫が目撃されていた。俥引きは三年坂を探していたようだった…。帝大生の兄が退学して怪我を負って戻ってきて、「実は三年坂で転んでね」という謎の言葉を残して死んだ。武士だった父は東京に残ったままで、母の実家の奈良で貧しく育った内村実行は、一高の受験勉強をしながら三年坂の謎と父の行方を探るため東京へ出た。兄が住んでいた下宿に入り、東京の街を三年坂を探して彷徨する。一方、予備校で英語を教える高嶋鍍金は、雑誌の編集者に東京を焼き尽くす発火点について調べるよう依頼された。同僚で帝大講師の立原がその話に興味を持って、高嶋に近づいてきた。高嶋も三年坂を探し始める。
 どこへ帰結するのか、非常に興味深く読んだ。こいつ怪しいという勘はあたっていたが、背後で諜報戦が繰り広げられていたのだった。江戸川乱歩賞受賞作。