伝説のハッカー、ケビン・マクガイヤにマフィアが接近してくる。同じ頃、そのケビンを捕らえたコンピュータ・セキュリティの専門家、笹生勁史は、通産省機械情報産業局の鍛代温子よりアメリカの特許に関する仕事を依頼された。それは、エリス・クレイソンという、多くの特許を持ち、日本企業から莫大なライセンス料を得ている発明家の謎についてだった。CIAの女性捜査官「ジェイ」も
、逆の立場から特許をめぐる日本企業の不審な動きとエリス・クレイソンの動向を探り始める。一方、独占的なダイヤモンド・シンジケート「DC」のトマス・リッポルトとアメリカの巨大企業「UE」のCEO、ジョン・エイカーズは、ダイヤモンドをめぐって謀議を交わしていた。
アメリカを舞台に、CIA、国防省、マフィア、国際企業、謎の産業スパイが入り乱れて暗躍し、ハッカーとセキュリティが対決したり、大統領選挙をめぐる思惑や、通産省と日本企業の隠れた意図が錯綜し、そこへ笹生がハイテク機器を駆使して乗り込むという、スケールの大きい力作だ。
アクション部分はドタバタ喜劇的な面白さもあるし、ラストにはミステリー的などんでん返しも用意されている。吉川英治文学新人賞受賞作。作者は女性だ。 |