蓮見圭一

水曜の朝、午前三時      

水曜の朝、午前三時 2006年1月15日(日)
 詩人、翻訳家として名の知れた四条直美は、脳腫瘍で亡くなる直前、娘の葉子のために病床で最後の声をテープに吹き込んでいた。そこに語られていたのは、自分自身の反省と秘密にしていた青春の思い出だった。自信家で優秀で人を見下して生きてきた自分、それを抑えられるように親によって許嫁、女子大、出版社と進路まで決められてきたことに反発して、1970年開催された大阪万博のコンパニオンに応募するいきさつ。そして、同じ職員の臼井との初めての燃えるような恋愛。しかし、万博が終幕する頃ある理由から恋に終りを告げて、知り合った臼井の妹やコンパニオンの友人とも音信を閉ざすことになる。そして、東京へ戻って勧められるままにお見合いして結婚する。
 読み終えて、なぜか妙な軽さを感じた。秀でた知性を持ち、ロックを聴いて自由を求めて、その果てがただの恋愛かとも思うし、それに終止符を打つことになる問題も別に主要なテーマとして掘り下げられているわけではないし、ところどころに引用したいような警句もちりばめられているが、そもそもタイトル自体が時代を感じさせるための引用であって何の意味もないのだから。でも、一人の風変わりでいかした女性の情熱というものはおもしろく読めた。