原田マハ

楽園のカンヴァス      

楽園のカンヴァス 2014年8月10日(日)
 倉敷の大原美術館で監視員を務める早川織絵が学芸員の小宮山に呼ばれて館長室に入ると新聞社の文化事業部長がいて、アンリ・ルソーの展覧会を開催するためニューヨーク近代美術館(MoMA)から「夢」を借り出すのに、先方のチーフ・キュレーター、ティム・ブラウンが織絵を交渉の窓口にすることを条件としているということだった。十七年前、MoMAのアシスタント・キュレーターだったティム・ブラウンと、パリ大学の大学院でルソーを研究していた織絵は、伝説のコレクター、コンラート・バイラーにスイス・バーゼルの自宅に招待され、ルソーの作品を鑑定することになった。そこには「夢」そっくりの「夢を見た」という作品があり、一冊の古書の七章からなる物語を一日一章読んで、真作か贋作か判断することが与えられた課題だった。その古書には、ルソーと絵のモデルになったヤドヴィガの物語が書かれていた。
 一枚のいわくつきの絵をめぐり、新進研究家二人が競い、その背後に価値を狙う人々が暗躍する美術ミステリー。途中から、ルソーやピカソの画集を見ながら読んでしまった。山本周五郎賞受賞作。