呉勝浩

道徳の時間      

道徳の時間 2018年12月7日(金)
 ビデオジャーナリスト伏見は、重大なミスを犯して、妻の故郷で休業中だった。妻の先生だった陶芸家南房先生が亡くなり、服毒自殺とみられていたが、部屋に「道徳の時間を始めます」という落書きがあったことから事件性が疑われた。同じようなメッセージを落書きした悪質ないたずら事件が連続していたのだった。一方、伏見は越智冬菜という若い女性から仕事を依頼される。十年前、著名な教育家を教え子だった大学生が講演会の最中に刺殺し、「これは道徳の問題なのです」としか言わず服役していた。その事件と犯人を取材してドキュメンタリー作品にするというものだった。
 おもしろそうな設定だが、過去と現在の事件の関連性にしても、過去の事件の真相にしても、いまいちピンとこない。条件付きの江戸川乱歩賞受賞作だそうだ が、そういうことならなしで良かったと思う。

スワン 2023年1月17日( 火)
 さいたま市に隣接する湖名川市の巨大ショッピングモール「スワン」で、ネットで知り合った男たちが拳銃と日本刀で無差別殺戮事件を起こした。バレエのライバル、古館小梢に呼び出された女子高生、片岡いずみも事件に巻き込まれ、安全だと思って避難したスカイラウンジで犯人に捕まり、銃を突きつけられて何人もが撃たれて死ぬのを目の当たりにした。事件後いずみは、その場にいて負傷した小梢によって人を見殺しにしたと告発されて非難の的になった。メンタルクリニックに通っていたいずみは、あるお茶会に呼び出された。事件の被害者の家族から依頼を受けた弁護士が、事件の現場にいた数人を集めて事件の謎を解明したいのだと言う。集められたのは誰で、なぜ呼ばれたのか、そして事件の真相は…。
 通常の探偵小説とは違い、呼び出された人間の正体やその理由、その場で何があったのかは少しずつ明らかになって行くが、いずみは自分だけが知っている真相を隠すことにする。吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞受賞作で、おもしろかった。