銀色夏生

夕方らせん ミタカくんと私    

夕方らせん 2004年5月10日(月)
 角川文庫のコーナーに行くといっぱい並んでいて、手にとって見るとどれも写真とポエム風の短文だけのくだらなそうな本、という印象だったが、新潮文庫で初めての物語集というのがあって、読んでみた。
 前半の「小夜鳥姉妹」、「蛍山小国」、「天使でなく」は風変わりな子供が主人公のファンタジーとポエムの中間のような掌編。子供ではないが、「月の落ちる池」は味わいのある作品だ。「Kの報告」、「草むらの中星が出て」は青年が主人公の短編。「ピース・ツリー」、「ウエタミ」、「船のしっぽ」は<金髪もの>で、おしゃまな女の子の分かっていない視点の先に男と女の世界を描いているのだが、あまりおもしろくはない。最後のほうの「若草のつむじ」、「真空広場」、「走る部屋」、「電車を待っていた人」は、男と女のファンタジー。こんな感じもいいかなという感想。「夏の午後」と「夕方らせんに住む人々」はエピローグで、<私>のいる場所。
 作者は著名な作詞家で、詩、エッセイを書き、詩画集、写真詩集を出しているのだそうだ。ずっと男性だと思っていたが、女性だった。確かにね。

ミタカくんと私 2005年2月7日(月)
 高校生ナミコの家には、近所で幼なじみのミタカくんが放課後も休日も入り浸って、寝転がって本を読んだり、家族と一緒にご飯を食べたりしてる。そういえばこの頃パパ見ないねと言えば、ああ離婚したのと答えるような家庭。ナミコも勉強するでもなく、絵を描いたりする以外はゴロゴロして昼寝したり、テレビを見たりする毎日。友達の代理で始めたアルバイト先で知り合った女の子も一緒になって、何事もなくまったりとした日々が続くが、時々軽い憂鬱に襲われたりもする。
 登場人物のキャラクターもおもしろいし、目標もなければあれしなきゃということもない、こんな生活してみたいなと思う。