銀林みのる

鉄塔 武蔵野線      

鉄塔 武蔵野線 2007年12月25日( 火)
 夏休みも後半に入ったある日の午後、小学5年生の見晴は近所の鉄塔の異様さに惹きつけられた。幼年時代から送電線の鉄塔が好きだった見晴は、その鉄塔、武蔵野線75-1から終点の変電所にある81号まで1本ずつ辿ってみた。逆に鉄塔を辿っていけば1号鉄塔に行き着く、そしてそこには原子力発電所があるに違いないという発見をして胸をときめかせて見晴は、年下のアキラを誘って、自転車で武蔵野線鉄塔を辿り、鉄塔の下の「結界」にビールの王冠を銀紙で包んだメダルを埋めるという探検に出かける。
 鉄塔の形から「女性型」、「男性型」、「料理長型」、「婆ちゃん」、「姐ちゃん」などと分類し名づける荒唐無稽な感性とマニアックさ、そして見晴が年下のアキラに意地や見栄を張る心理、探検の間に出くわすさまざまなエピソードが、少年小説らしくておもしろい。鉄塔1本1本が確かに微妙に形が違うのが興味深く、ベランダから武蔵野線の送電鉄塔を観察し、志木街道をジョギングしながら新座変電所の鉄塔群を眺めてしまった。