降田天 |
偽りの春 |
偽りの春 神倉駅前交番 狩野雷太の推理 2022年1月13日(土) |
「鎖された赤」:幼い頃に見たような赤い着物に身を包んだ少女の映像で性に目覚めた僕は、施設に入った祖父の家の土蔵でその記憶がよみがえり、少女を誘拐して閉じ込める。 「偽りの春」:還暦を超えた女四人と男一人でやっている結婚詐欺グループの仲間の、女一人と男が金を持ち逃げし、しかも脅迫してきた。 「名前のない薔薇」:母が入院した病院で知り合った看護師と付き合うようになったが、本職は泥棒だと打ち明けると、薔薇を一輪盗んできてと言われる。 「見知らぬ親友」:美大に入ってピンクサロンでバイトしているところを、専攻は違うが同い年の女の子に見られ、誰にも言わないからと言われ、誘われて一緒に住むようになり、奴隷のような生活が始まった。 「サロメの遺言」:声優の女の子に自作の作品に起用してくれとこわれ、断っていた。彼女の死体が横たわる部屋でいろいろ工作して部屋を後にする。 神倉駅前交番に勤める狩野は軽薄な印象の中年警察官。ある事件がきっかけで捜査一課から交番勤務に替わったが、長年の経験から人の嘘を見抜き、事件の真相を明らかにする。また新しいタイプの探偵。倒叙ミステリーだが、最後の作品はその倒叙部分自体にトリックがある。日本推理作家協会賞(短編部門)受賞作。作者は、執筆担当とプロット担当の二人の女性のユニット。 |