古野まほろ

天帝のはしたなき果実      

天帝のはしたなき果実 2022年1月8日(土)
 パラレルワールドの日本帝国、1990年。姫山市の県立勁草舘高校の吹奏楽部の金管メンバーは、アンサンブル・コンテストに向けて練習していた。そんな時、主席ホルンの古野まほろの親友で生徒会長で伯爵令息の奥平が頭部を切り取られた死体で発見された。奥平は、古野が首席トランペットの英国侯爵令嬢修野まりから預かった暗号のようなメモを解読しようとしていた。そして、コンテスト当日顧問の瀬尾兵太が同じように頭部のない死体で発見された。古野たちは、コンテストの発表の時間までに犯人を推理しようとする。
 吹奏楽部を舞台にした青春ミステリーかと思ったら、とんでもなかった。作者は東大卒の元警察官僚で、単純な言葉を難読漢字で書いてルビを振り、聖書その他の引用多数という、ペダンティックの行き過ぎた面があって、非常に読みにくい。ミステリーとしては、あくまでもアリバイのすきを細かくつくという有栖川有栖方式なのだが、最後伝奇SFになってしまうのはうんざりだ。メフィスト賞受賞作。